現代風景写真表現
第9回

「悪条件」は新たな視点を得るチャンス

長く風景写真を撮っていると、「風景」と「写真」の両方について理解が深まり、結果として写真作品を見る目も培われてくるものです。自分が撮る写真と、他者が撮る写真の違い、それぞれの持ち味に気づくこともあるでしょう。しかしそれは時として多分に感覚的で、言語化しにくいものであったりもします。

現代風景写真表現」では、萩原史郎、俊哉兄弟が長年培った知識、経験、そして風景写真家としての矜持を「1作品、1エッセイ」の形で多数収録。美しい作品とシンプルな言葉を通して「風景写真によって表現するとはどういうことか」を知ることができる一冊です。

四季を写す中で持っておくべき心構えに関する言葉のみならず、テーマとした風景の考察や撮影時の意図、構図、露出、現像設定なども併せて掲載しており、風景写真のハウツーも学べます。

本記事では第四章「冬の白景は凛として佇む」より、「悪条件の捉え方」に関する記述を紹介します。

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現代風景写真表現

条件の悪さを克服するマインド術

花のピークを狙ったのに少し早かった…など、思い通りの状況にならないことは、風景写真の現場では日常茶飯事である。そのようなとき、一喜一憂せずに気持ちを切り替えるマインドコントロール術が大切だ。

思い通りにならない、いわゆる「条件が悪い」ときは、逆にチャンス到来と考えるべし。絶景に撮らされることなく、自分の目で被写体を探し、工夫を凝らして撮影することができる。それゆえ、撮影技術が向上したり、オリジナリティあふれる作品が撮れたりすることも多いのだ。

また「撮影会のリーダーになりきる」という訓練法もオススメだ。リーダーは皆によいお手本を見せなければならない。条件が悪いときでも作品を撮り、あらたな視点を見つけて皆に伝える役割だ。その責任感や心意気が、自分を成長させてくれるだろう。

フルサイズカメラ 24-70mm ズームレンズ (33mm) 絞り優先 AE(F8・1/160秒) +0.3EV補正 ISO100 WB:太陽光

画題の考察
春近し:一見すると冬の風景だが、薄い積雪にぼんやりとした霞から、春が近いことが伺える。雪国の冬は長く、春への期待は大きい。そのような思いで画題を考えた。

現場の読み
決して絶景とは言えない朝の風景だったが、うっすら見える畑のラインや、ぼんやりとした光から、牧歌的な風景が頭に浮かんだ。そのイメージを追い込んで撮影すると、よい作品に仕上がると思って挑んだ。

構図の構築
2分割構図で空と大地を配置し、太陽の位置を真ん中に置くことで、インパクトを与えることにした。

露出の選択
おぼろげな風景なだけに、美しい描写力で見せたいと思った。そこで、程よい被写界深度と高解像を両立したF8の絞りと、ISO100の低感度に設定し、三脚を使って精密に撮影した。

撮影備忘録
この年は雪が少なく、いつもと畑の雰囲気が違っていた。だからこそ出合えた素敵な風景を皆で楽しんだ。

RAW現像
遠景の山の表情をもう少し見せるため「かすみの除去」を調整し、牧歌的な雰囲気を高めるために「明瞭度」を下げて、ふんわりと明るく仕上げた。
露光量:+0.10 明瞭度:-10 かすみの除去:+10


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