Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック
第7回

【RAW現像テクニック】白い氷と黒い水の「温度感」を伝える「白レベル」と「明瞭度」の調整

デジタルカメラやスマートフォンでは、撮影した写真の記録形式として「JPEG」のほか「RAW」という設定項目を選べることがあります。RAWは一言でいえば「撮影画像の生データ」。データ容量が大きいかわりに、JPEGよりも多くの情報を持っている未圧縮の画像ファイルです。

RAWはほかの画像ファイルに比べて特殊で、専用のソフトが必要になるなど扱いも難しく、「すぐ見られなくて面倒くさそう」「難しそう」といった理由で、RAWでの記録を敬遠している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック」では風景写真をメインに、RAW現像ソフト「Lightroom」を使ったプロの現像テクニックを紹介。作例とした写真表現の方向性に「威風堂々」「爽快感」「幽玄」といったテーマを設定し、写真を調整する際の考え方や具体的な手順を学べます。

本記事では第3章「中級編」より、「温度感」をテーマにした作例の調整について解説します。

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Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック

薄氷と水の道の温度感を伝える、凍えるような青色を添えて……

氷柱の撮影に出かけた際に見つけた小さな風景。少し歩けば巨大なアイスパレスがあるのだが、足元に広がる何気ない風景に惹かれ、様々な表現に挑んだ。とくに惹きつけられたのは、薄氷と水の道が作る美しいハーモニーだ。薄氷に接近して氷の世界を撮影することもできたが、両者が一体となって作っている「風景」そのものに興味がわき、このような構図を考えた。撮影中は、手前の薄氷を壊さないように気をつけ、アングルを変え、カメラの縦横を変えながら何枚も撮影した。凍えるような空気の中の撮影だったこともあり、その空気感、温度感を伝えるRAW現像を行っている。

Before(現像処理前)
薄氷の美しさ、流麗な水の道、それらが青い時の中で調和している様子を描くことが狙い。RAW現像では、頭の中に思い描く「青い時」を再現することが最重要課題となる。とはいえ、それは難しいことではなく、「色温度」の調整を覚えれば誰でもできる。

 

After(RAW現像)

  • 画面の左上方向は明るく、右下方向は暗い。そのため、光を受けている左上の氷は白飛びしやすい状況だ。それを踏まえて、あまり明るくならない露出を選んでいる。
  • 水の流れを形作っている3つの氷を画面の中でバランスさせることが構図の決め手の1 つ。奥行きを出すために、上の氷は左上隅へ抜けるように意識している。
  • 左上、左下、右端へと水の入り口や出口を配置しているが、もっとも気にかけた部分は、左下隅へ抜ける水の方向性だ。左上隅へ抜ける氷と、左下隅へ抜ける水の2つで画面全体の美しさを整えている。

Step1
全体の色味をどのタイミングで決めるかは、調整のしやすさによってそれぞれ違う。この場合は「青い時」がもっとも重要なファクターであり、最初に決めると後の流れがスムーズになると考えたので、最初に行っている。

絶対とはいわないが、画面全体を支配する色の系統を寒色や暖色に調整するには「色温度」がよいだろう。寒色系なら5000ケルビン以下にするとよい。ここでは思い切って「4200」を選び、青みを強く表現している。

Step2
氷の白さや透明感を表現するには、ヒストグラムの山を右側へ広げることがポイント。そのために使う調整項目はここでは「白レベル」が最適と判断した。

「白レベル」を「+60」にすることによってヒストグラムの山は右側へより、氷の白がすっきりと際立ってくる。氷は曖昧に明るくするより、しっかりと明るくしたほうが結果がよい。

Step3
白い氷と黒い水は、コントラストを持たせたほうが互いの存在感が強くなる。そこで「明瞭度」を使うことで、白も黒もメリハリを付けるように調整した。

「明瞭度」を「+50」にすることで、白も黒も引き立ち、互いを目立たせる結果となった。このとき、氷がほんの少し白飛び気味になったとしても、STEP4で修正できるので、気にしなくてもよい。

Step4
STEP-3で「明瞭度」の調整をしたことで、左上隅の氷が少し白飛びしかかったので、「ハイライト」を使うことで白飛びを抑える調整を行った。

左上隅の氷の調子がやや失われ気味になったが、「ハイライト」を使うことで抑えることができ、調子が戻っている。途中のSTEPで白飛びや黒潰れが起きても、その後のSTEPで調整することができる場合が多いので、あまり心配せずに調整してみよう。

Lightroomではじめる 風景写真RAW現像テクニック

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かし方
自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

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