赤城写真機診療所
第7回

「露出神経不感症」デジタルカメラの利便性により罹患する病気に注意

赤城写真機診療所 ~そんなカメラは捨てなさい~」では、カメラや撮影にまつわる悩みや迷いを「疾患」に見立て、「カメラ科」「レンズ科」「撮影科」「アクセサリー科」それぞれのカテゴリーで、質問を「症状」、回答を「診察」としてカメラや写真、撮影時の疑問に答えています。

「診察」と銘打ってはいますが、要は著者によるお悩み相談。「カメラあるあるネタ」に対する著者の見解を楽しむ一冊となっています。

本記事では「アクセサリー科」における診察内容の1つを抜粋してお届けします。

 

単体露出計は使っていますか?デジタルカメラでは露出は比較的正確だと思うのですが。


単体露出計が重要なアクセサリーであるという論評は多くの写真入門書でみかける。本書としては持っていたほうがベターだけど普通の撮影にはイラネというのがはっきりした結論になる。

単体露出計、とくに入射光式の露出計は被写体の反射率や色に影響されることなく、光の強さのみを測光するので、理論的には正確な値が得られるはず。

ところが、写真は光に照らされた被写体を撮影する。したがって単体露出計で出た値を設定して撮影するのではなくて、反射率や色を加味して露出決定をすることも多くなる。俗に言われる黒いものにはマイナス補正、明るいものにはプラス補正というのはTTLメーターなど、反射光式の定石的な補正の方向だ。

ところが意外にも入射光式の単体露出計を使う場合は、黒い被写体が画面の多くを占める場合には測光した値より多めの露光を与えて黒つぶれしないようにしたり、白い被写体が画面の多くを占めるものには、意図的に少なめの露出を与えて白とびをしないようにしたりすることもある。もちろん条件は一定ではないが、こうなると一般的に知られている定石とは逆方向の露出補正をしていることになる。

そういう意味ではカメラ内蔵のTTLメーターのほうが理想的な値を導き出すこともあるので侮れない。単体露出計で測光した値をそのままセットするよりも写真的な中庸な露出が得やすいことは間違いないからだ。もっとも複数のライトやストロボでライティングをする場合は光量比が重要になることが多いから単体露出計の存在は重要なのだ。

と、書いてはみたものの、デジタルカメラを使うようになってからというもの、仕事の撮影でも露出計を忘れてしまったことが複数回ある。まったく緊張感に欠けること甚だしいが、単体露出計を使ってシリアスな顔で露出を測り、いかにも難しい撮影をしているようにみせるのもカメラマンのパフォーマンスとして重要である。大型のストロボを使用する場合でも数回のテスト撮影さえできれば、モニターの画像とヒストグラムを見ながら光量調整や光量比を調整することはできる。デジタルカメラの利便性によって「露出神経不感症」に陥っているわけです。真似しちゃダメですよ。

  写真+イラスト:大村祐里子

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続編「赤城写真機診療所 MarkII
(2018年6月29日発売)

著者プロフィール

赤城 耕一


(あかぎ・こういち)

1961年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学写真技術科卒業。出版社を経てフリーに。雑誌、コマーシャル、企業PR誌などで人物撮影を主に担当する傍ら、戦前ライカから最新のデジタルカメラまでレビューも行うカメラ好き。カメラ雑誌、書籍など執筆多数。
「銀塩カメラ放蕩記(アサヒカメラ)」「ボケてもキレても(月刊カメラマン)」連載中。

書籍(玄光社):
中古カメラはこう買いなさい!
ズームレンズは捨てなさい!

Twitter:@summar2
ブログ:赤城耕一写真日録


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