「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第10回のテーマは「靴」。「歩く」と「立ち止まる」の2つの状態を交互に繰り返す靴は、撮ってみると意外に動きがあり、バリエーションもつけやすい被写体です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1.「動」と「静」を意識して撮り分ける。
2. ローアングルで撮りやすいカメラを使う。
お友だちとカフェに行った時、物を落としてしまったのでテーブルの下を覗き込みました。その時、目に入ったお友だちの靴の雰囲気が、味のある床とマッチしていて、クールでカッコいいなと思ったのでシャッターを切りました。
「動」と「静」を意識
靴を撮影する時に意識すると面白いのは、「動」と「静」ではないかと思います。誰かが履いている状態の靴であれば、動きのある「動」の写真を撮ることができますし、置いてある靴だけならば「静」の写真を撮ることができます。「動」の場合は、履いている人に動きをつけてもらったり、多重露光をしたりして、動感をより演出してみましょう。「静」の場合は、その靴に合うような床面を選び、ブツ撮りとしても成立するような絵づくりをしてみるとよいでしょう。
ローアングルに強いカメラを
靴は基本的に低い位置に存在しているものなので、ローアングルから撮影しやすいカメラを選ぶと、より撮りやすくなります。わたしはウエストレベルファインダーの二眼レフのカメラを床面に置いて撮影しています。そうすると、上からでも構図の確認がしやすいので便利です。バリアングル液晶付きのカメラもローアングルに強いので、よいと思います。また、セルフタイマー付きのカメラであれば、自分の履いている靴をタイマーで撮影することができます。
椅子の上に乗るために靴を脱ぎました。ふと下を見ると、自分の脱いだ靴が床面の色と合っていて良い感じに見えました。そこで、俯瞰から撮影しました。靴を撮る時、床面は“ブツ撮り”でいうところの「背景紙」だなと思っています。靴を引き立てるいい床があったら、どんどんシャッターを切りましょう。
かわいいビーチサンダルを買ったので、それをどこかで撮影したいなと思っていました。ローカル線の駅で良い光が入っているスポットがあったので「ここだ!」と思い、ビーチサンダルを履いたまま椅子に座り、その様子をセルフタイマーで撮りました。ビーチサンダルに注目してもらうために、あえて足元を気にするようなポーズをとってみました。
久しぶりにヒールの高い華奢な靴を履いた日でした。「この雰囲気を活かした写真を撮れないかなあ」と思いました。ただ、単に靴だけ撮っても面白くないので、自分でその靴を履き、歩き回る様子をローアングルから多重露光で撮影してみました。大人っぽさを出すために、フィルムはモノクロを選択しました。動きのある面白い写真になったかなと思っています。