アニメーションのエフェクト作画テクニック
第9回

プロによるアニメーションのエフェクト作画〜立ち込める「煙」の密度感と動感

アニメーション作品において、ある事象や現象の「動き」を表現するにあたっては、主体となる登場人物や物体を動かすほかに、動きに伴って環境に変化が起きたことを示す「エフェクト」の描写が必要です。

作品世界で起きた現象を表現するのにきわめて重要な要素でありながら、それ単体では注目されにくい「エフェクト」。アニメーターは現実に起こりうる現象から、物理法則を無視した表現にいたるまで、あらゆるシーンで説得力のある視覚効果を描く必要があります。

アニメーションのエフェクト作画テクニック」では、「弱虫ペダル GLORY LINE」や「楽園追放 -Expelled From Paradise-」などの作品でエフェクト作画監督をつとめたアニメーターの小澤和則さんが、様々なエフェクトの作画技術を伝えています。「炎」「水」「風」「光」「爆発」などの様々なエフェクトについて動感を出すコツを解説しながら、「炎+煙」など、複数のエフェクトを組み合わせて見せる表現方法にも言及しており、アニメ作画の幅を拡げる実践的な内容です。

本記事では、Chapter5「爆発」より、爆発に伴って生じる「煙」の描き方に関する記述を抜粋して掲載します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

アニメーションのエフェクト作画テクニック

一般的な煙です。内線といわれる中に描かれている線と影で表現しています。こちらは左から右へとスライドさせて見せる時などに使います。内線を(デッサン補助のために)実線で描いて、影を色トレスで表現するのが一般的です。仕上げの際に内線を違う色できちんと塗ってもらえると密度感が出ます。逆に内線の色が影の色と同じような色にされてしまうと見えなくなってしまうので、その辺は注意が必要ですね。

内線あり

下は影のみで煙を表現しています。影のみのほうが中の煙部分を回転させるなど動きを見せる時に適しています。もくもくと動かすのが好きな人はこちらで描く場合が多く、影も色トレスではなく実線で描くのが一般的です。煙の影を表現するという意味ではこちらが適していると思いますが、アニメ的な表現では上の煙を使う場合が多いですね。

同じフォルムで内線なし

立ち上る煙

よく戦場などで立ち上っている煙です。原画として描くのはこの1枚で、白、青、黄色で3段に分けてそれぞれスライドさせることで煙が立ち上って風に流されていく感じが出せます。スライドさせる場合は、原画にも描いていますが、SL(スライド)と描いてスライドさせてほしい幅も指示を入れておきます。そうすると撮影のほうでうまくスライドさせてくれます。汎用的な煙なので、何個か作って組み合わせたりもします。

スライドさせたい場合はSL(スライド)と指示を描きます。その時、どの程度スライドさせたいかの幅も矢印で描いておくと良いです。

これは中で炎が燃えている場合です。Cセルが炎で、Dセルが燃えている物体、そこにBセルの煙とAセルの靄みたいなものを合成することで密度感や情報量を出しています。画面映えさせる時に使いますね。T光の炎の部分はある程度動かしたり消したりしつつ、Aセルの靄は薄く透けさせることで奥行感を出しています。


アニメーションのエフェクト作画テクニック

関連記事