人の頭の中にある概念や構想、いわゆる「コンセプト」を他者に伝えようとするとき、絵の力は強力に作用します。遠い将来や、開発前の製品など、具体的な像が定まらない目標に向かうことはとかく困難になりがちですが、「目的を達成した後の世界」を絵として具体化し、他者と同じイメージを共有することで、一つの完成形や目標に向かって、迷いなく進むことができるようになるのです。
「トミーのコンセプトアート教室 マンガと添削で楽しく学べる!」では、コンセプトアーティストの富安健一郎さんが、コンセプトアートの考え方と始め方、上手なコンセプトアートの描き方を、佐倉おりこさんのマンガとともに詳しく、かつ、わかりやすく解説しています。
後半では、事前に公募したコンセプトアートの添削や、富安さん自身によるコンセプトアートの制作手順も紹介。初めてコンセプトアートを描こうと考えている人にも実用性の高い内容となっています。
本記事では、PART2「トミーの添削教室」より、事前に公募したコンセプトアートの添削を抜粋して紹介します。
テーマ:短いシナリオから描く「破壊を停止せよ」
作成者:オリグチ
Original
シナリオ
20XX年、発展し続ける大都市では自立型AIを搭載した建設用作業ロボットが昼夜を問わず稼働していた。日中、その中の一台が突如として暴走。高速道路にたどり着き、あらゆるものをなぎ倒していく。そこで派遣されたのは一人の凄腕ハッカー。
イラストコンセプト
舞台は近未来ですが、あくまで日常に現れた危機を表現したかったので日中の街中を想定して描きました。人物とバイクを強調したかったのでロボットは上からの光線でコントラストを弱めています。破壊される照明灯や電光掲示板、飛ばされる車などで臨場感や危機感を演出しました。
トミーのコメント
全体の構成や遠近感の表現、色彩などとてもよく気を配って描けている作品ですね!ドラマティックなシーンをかっこよく描こうとする意志がとてもよく伝わってきます。ここからさらに魅力的な絵にするためにそれぞれのもののデザインについて考えてみましょう!
メインのメカはもっとコンセプトを明確にしましょう。工業用なのだとしたら、もっとそれがわかるデザインがあるはずです。バイクと人物も同様ですね。現代の男性が普通のバイクに乗っているだけに見えるので、目的を持ってデザインを変えましょう。
ちなみにバイクが手前向きになっているのと、立ち姿が平然としすぎているため、人物のいる意図がわからなくなっています。明確に何をしているところなのか決めたうえでそれを表現しましょう。
Tommy’s Check
Check 1
工業用ロボットの設定のようですから、ハシゴや、進入禁止の看板、パトランプみたいなものがあったりしてよいでしょう。色々モチーフがあるはずですよ。
Check 2
ビルや車など、全体としてもっと未来感を出してみましょう。道路のようなので、未来っぽい標識があってもいいですね。