多くの領域における「技術」は、それぞれの分野において確固たる基本、基礎の上に成り立っているものです。
では、「絵の腕前を上達させたい」と思ったときに基本となる技術は何でしょうか。その一つとしてよく挙げられるのが「デッサン」です。描こうとしているものの形や構造、光の当たり方と陰影の出方をよく観察し、認識し、できるだけ正確に表現すること。それは現職の中にも改めて習うプロがいるほどに重要な技術です。
「比較でわかる初心者デッサンの教科書」では、基本的な図形から立体表現、透視図法、陰影のトーン、素材感、光沢、構図など、絵を描く上で基本的な知識を豊富な作例と図解で解説。改善前と改善後のデッサンを比較できる形で提示し「ありがちなミス」への気づきを促す構成となっています。
本書はアナログ画材でのデッサンを練習する主旨の書籍ですが、本連載ではデジタル環境での練習にも応用して使える知識や概念を中心に掲載します。
本記事では、第3章「材質を表現する」より、「電球」の光沢や口金の金属感を表現する方法についての解説を紹介します。
繊細な形状の電球を描く
全体を擦ってしまうと質感が出せないだけでなく、各部分の形を表現することができなくなるモチーフです。細部まで丁寧に質感を出すことが求められます。
改善前:鈍く雑な電球
調子を雑に乗せると、質感や形状が鈍くなってしまう。
モチーフ解説
パーツを観察する
寝た円錐とイコールとして形を考える
改善ポイント:描き順
ソケットにねじ込む口金を手前にしてセットし、ラフスケッチを描く。
比率や形を合わせ、中心軸を取る。中心軸と直角に金属とガラスの接合部分と底面の楕円を取る。
楕円が取れたら、斜めの角度に気をつけ、口金のネジを描く。
口金の金属質を出せるように白を残し、エリア分けして細かく調子を乗せる。
中心軸にそって、マウントやフィラメントのメリハリを強めに描き込む。
明度が高い外側のバルブのガラスを描く前に、床に落ちる影をしっかり描く。
細かい構造や調子の変化に気をつけ、調整しながら描き進める。
電球のガラス部分をサッピツやガーゼを使って調子を乗せ、プラスチック消しゴムでハイライトをしっかり抜く。