イラストレーションはもちろん、写真や映像など視覚に訴えかける媒体においては、登場人物の感情や作品世界の表現に、しばしば「モノクローム」が採用されます。
モノクロの画面は一般的に、カラー画面よりも色彩の情報が少ない分、主題の「明暗」や「形」に意識が向きやすいと言われています。モノクロのイラストレーション、とりわけキャラクターの表現においては、線の使い分けやラインの引き方、質感の表現方法、影の付け方、塗り方を工夫することによって、モノクロならではの独特な雰囲気を演出することも可能であり、それはモノクロイラストが持つ魅力の一つでもあります。
「モノクロイラストテクニック」は、モノクロでキャラクターを作画する際のテクニックを紹介する指南書です。イラストレーター・jacoさんによる詳細なテクニック解説をはじめ、カラーイラストにはない表現手法、イラストのクオリティチェックを行うために見るべきポイントなども紹介するほか、jacoさんが得意とする「角娘」(角の生えた少女)のモノクロイラスト集としても楽しめる一冊にまとまっています。
本記事では、第4章「光源・光量を意識して作画しよう」より、光源の位置による光の当たり方、影のでき方に関する解説を抜粋して紹介します。
光が当たる方向を考え、影やハイライトを入れる
- 左上の一番明るい部分がハイライトです。
- 影は光源とは逆の方向についています。
- 中間色の調子の変化はなだらかに。
- 床からの反射で影が弱まっている箇所もあります。
光源に一番近い部分がハイライトとなって、明るく反射しています。そして光源とは逆の方向に影がつき暗くなっています。この単純な構造の球体をモデルに、光源に対してどんなハイライトや影がつくのか理解しておきましょう。
NG:光源を意識しないで描いた場合
光源を設定せず、思いのまま立体感を出そうと影を描き込みタッチを重ねています。しかし影の付け方が整理されておらず乱雑な印象を受けます。
- 左上:髪の光源、服の光源
- 真上:右手の光源
- 右上:顔の光源
これでは光源が複数存在することになってしまい、また影の入れ方が不自然に見えます。
OK:左上からの光源を意識した場合
影やハイライトの処理を整理したので、無駄な描き込みをしていませんが、絵に奥行きや立体感が生まれました。
- 左上光源のみ
- 首、肩の影が統一され、奥行きを感じさせます。
- 服のシワや影の描き込みは整理しました。
光の当たる方向で影も変わる
正面が光源のシミュレーション
正面からの光源の場合、顔に付く影が減るためキレイに見えるのと、手前に向かってくる印象があるため、普段とは違う雰囲気を演出できる利点もあります。
正面からの光源は、独特な雰囲気を演出できる。
光源は必ず上から降り注いでいるわけではありません。カメラのフラッシュのように、強い光を正面から受けた場合を想定して描いたものですが、このようなシーンでも、光の当たる方向を想定しておけば状況に応じたイラストをまとめることは可能です。
- カメラのフラッシュを浴びたような、強い光を感じさせます。
- 髪の毛のハイライトは正面を向いています。
- 服の影は体を巻き込むようにつけています。
<玄光社の本>