風景写真の便利帳
第7回

四辺四隅に気を配って美しく仕上げよう

デジタルカメラやスマートフォンの性能が上がり、シャッターを押せば誰でもカンタンに美しい写真が撮れるようになった。しかし、「ワンランク上の写真を撮りたい、もっとレベルアップしたい」という人も多いだろう。萩原ブラザーズこと、風景写真家の萩原史郎氏と萩原俊哉氏は、共著の「風景写真の便利帳」で自然風景撮影にかかわるさまざまなノウハウを紹介している。

本記事では「撮影編」の「構図」より、画面周辺部の処理方法についての解説を紹介する。

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風景写真の便利帳

 


CHECK POINT!!

  • 四辺四隅に気を配ること
  • 内容に無関係な要素は四辺四隅からカット
  • 四辺四隅が整っていると写真は美しい

さまざまな構図法がある。三分割法、日の丸構図、対角線構図、覗き見構図、S字構図…。どの構図法であっても、画面の四辺や四隅への配慮が欠けていると、どんなに内容性がよくても、どんなに構図的にはまとまっていても、どこか締まりのないだらしない写真になってしまう。

たとえば、画面の端に写真の内容とは無関係の枝が入り込んでいたり、画面の角方向に伸びている枝が角ではない位置からフレームアウトしていたりすることだ。後者の場合、たとえ角で枝がフレームアウトしていなかったとしても、内容に影響はないかもしれないが、ほんのわずかなことであるなら、なおさら角からフレームアウトしているほうがすっきりと美しく見える、そんな意味だ。

とても小さなことだ。カメラのファインダーや背面モニターを見ているときは気がつかないかもしれないが、大きなモニターに映したり、プリントにしてみると気になってしまう。ましてや、フォトコンテストの場では、そういった小さな配慮や処理ができているか否かが当落の分かれ目になるのである。

[共通データ]フルサイズカメラ 24 -70 mmズームレンズ(27mm) 絞り優先AE(F16・1/4秒) ISO200 WB:太陽光

上の写真、左上に注目してほしい。角に斜めの枝が入っていることがわかるが、この枝は写真の内容とは無関係なので、これを入れる必要はない。そこに気づき、角の処理を修正したものが下の写真だ。とても小さなことだが、枝に気づいてしまうと上の写真はどうにも落ち着かない。

[共通データ]フォーサーズカメラ 14-150mmズームレンズ(14mm/35mm換算28mm) 絞り優先AE(F5.6・1/125秒) +2.0EV補正 ISO200 WB:太陽光

2つの写真を見比べてほしい。写っているのはほどんど同じ場面だ。注意深く見ないと違いはわからないかもしれないが、右上角と右下角に、小さいながらも決定的な差がある。上の写真、右上角は枝の処理が中途半端だし、右下角と幹は少しずれている。一方、下の写真は、2つの角に枝や幹がきれいにおさまっている。内容が同じだとしたら、どちらが美しいかに議論の余地はないのだ。

 


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風景写真の便利帳

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かし方
自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

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