和の幻想世界の描き方
第5回

ラフの段階からレイヤーとフォルダ構成を固めておく

和風ファンタジーの世界観は、アニメやゲームなどで人気のある類型の一つです。わたしたちが歴史の中で垣間見る過去の日本とは似て非なる日常生活の様相には、その世界でこれから繰り広げられる物語への期待を掻き立てる魅力があります。

和の幻想世界の描き方」では、イラストレーター七原しえさんが、イラストの背景にある設定のほかアイデアを発想するコツ、イラストに仕上げるまでの制作手順を詳細に解説。世界観の設定からイラストレーションを起こす技術を身につけられる一冊となっています。

本記事では第1章「春霞」のイラスト製作工程のうち、キャラクターのデザインとラフの作成手順について抜粋して解説します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

和の幻想世界の描き方

 

作品名「春霞」七原しえ
作品名「春霞」七原しえ

 

キャラクター

春がテーマの人物設計
桜・蝶・花弁を人物全体に取り入れました。パッと見、何を連想して描いたか分かるようにアレンジ部分は比較的大きめにデザインし、目立たせています。

髪飾り・アクセサリー
髪飾りに風鈴・鈴・春牡丹・かんざしなどを取り入れています。今回髪を長く自然に風になびかせたかったので毛先の方には装飾品は加えていません。

着物の袖飾り・アレンジ
着物に装飾具を追加するアレンジは難しいのですが、袖には禿などの子供用和服衣装で多くみられる袖飾りが使えます。紐や鈴を付けたりテーマに合わせた小物を付け加えます。

帯をアレンジ
今回表側からはあまり見えていませんが、帯もアレンジしています。兵児帯にかんざしを挿した日本髪の後ろ姿をイメージしてデザインしています。

着物の裾をアレンジ
裾の形状を変え、また何枚も重ねたりすることによって着物の形状に変化を出します。今回は花弁をイメージした長めの裾と、内側の細かいフリルレースを追加しました。

ラフ

ラフと完成品でイメージ変わらない描き方
イメージや構図固めのための大ラフを作成してからラフを制作しました。他の章でも同様となりますが、基本はラフの段階で、背景-人物-手前など全てフォルダ分け・レイヤー分けして描いています。また、全体のカラー調整用レイヤーや光をプラスするオーバーレイレイヤー・影用レイヤーも極力分けて描きます。完成稿とのカラーイメージの乖離を無くし、制作のスピードを上げるために、ラフで作成した効果用レイヤーを使用することを想定しています。ラフと完成品でイメージが変わってしまう、という人は試してみてください。

大ラフからラフへブラッシュアップ

まずは大体の構図を決めた大ラフを作成しました。イメージがうまく描き出せたら、次に大ラフの不透明度を下げて上から新しくラフを描いていきます。まだラフの段階ですが、フォルダ・レイヤーは完成稿構成とほとんど変わりありません。線画と人物固有色(環境に左右されないベースの色)のフォルダ上に人物を一旦暗くするための明暗調整レイヤー(乗算)明るさを加筆するためのオーバーレイレイヤーを足す方法です。

<完成>


和の幻想世界の描き方

著者プロフィール

七原しえ

七原しえ
青森県出身・在住イラストレーター。
商業・オリジナルイラスト共に和風・和柄イラストをメインに制作。日本的なイラストを現代風にアレンジした豪華で細密、幻想的な絵柄に定評がある。TCG、ソーシャルゲームイラスト、書籍装画を中心に国内外で活動中。主な経歴として、ポケモンカードイラスト(株式会社クリーチャーズ)、ONE PIECEカードゲーム(株式会社バンダイ)、英傑大戦(株式会社セガ)、FGO 概念礼装(株式会社ラセングル)、マジック:ザ・ギャザリング日本画・浮世絵土地(Wizards of the Coast LLC,)、戦国無双5(株式会社コーエーテクモゲームス)、週刊少年ジャンプ『逃げ上手の若君/松井優征』(集英社)カラーイラスト背景、その他TRPG、ホラー小説、ファンタジー小説を中心とした書籍装画多数。
オリジナル画集『緋花 根の国底の果て 七原しえ画集』(KADOKAWA刊)

関連記事