多くの領域における「技術」は、それぞれの分野において確固たる基本、基礎の上に成り立っているものです。
では、「絵の腕前を上達させたい」と思ったときに基本となる技術は何でしょうか。その一つとしてよく挙げられるのが「デッサン」です。描こうとしているものの形や構造、光の当たり方と陰影の出方をよく観察し、認識し、できるだけ正確に表現すること。それは現職の中にも改めて習うプロがいるほどに重要な技術です。
「比較でわかる初心者デッサンの教科書」では、基本的な図形から立体表現、透視図法、陰影のトーン、素材感、光沢、構図など、絵を描く上で基本的な知識を豊富な作例と図解で解説。改善前と改善後のデッサンを比較できる形で提示し「ありがちなミス」への気づきを促す構成となっています。
本書はアナログ画材でのデッサンを練習する主旨の書籍ですが、本連載ではデジタル環境での練習にも応用して使える知識や概念を中心に掲載します。
本記事では、第5章「重要な構図の知識」より、画面内に3つ以上のモチーフがあるときに構図を取るコツについての解説を紹介します。
構図が取れない原因と対策
モチーフの数が3つ以上になると、構図の取り方が大変難しくなります。構図の論理を身につけることで、表現力が養われます。
原因1:画面の意識がない
画面のサイズに対してのモチーフの比率、位置関係の正確性を高める。
フリーハンドでの写し描き
見本
文字のみ写そうとしてズレた例
画面からの距離や文字の間のすきまを比較せずに写している。
画面の正しい位置に写した例
画面と文字との距離やサイズを認識して、バランスよく写すことができている。
原因2:構図の考え方のズレ
視点の位置、主題の位置、影の方向、角度などによる効果を活かした構図を取る。
影を含めた構図
悪い構図
右側が空いて無駄があり、画面から影が切れてしまいバランスが悪くなっている。
良い構図
影も入れた構図で、画面上に空きがなくバランスがよい。
アドバイス
ライティングによる影ののびる方向や長さを調整すると、バランスのよい構図がとれる。
一部を切った構図
普通の構図
モチーフをすべて画面に収めた構図。間違いではないが、画面を活かすことができていない。
効果を考えた構図
モチーフの一部(右の円錐)を切ることで、画面の右側に広がりを見せることができている。