イラストレーションはもちろん、写真や映像など視覚に訴えかける媒体においては、登場人物の感情や作品世界の表現に、しばしば「モノクローム」が採用されます。
モノクロの画面は一般的に、カラー画面よりも色彩の情報が少ない分、主題の「明暗」や「形」に意識が向きやすいと言われています。モノクロのイラストレーション、とりわけキャラクターの表現においては、線の使い分けやラインの引き方、質感の表現方法、影の付け方、塗り方を工夫することによって、モノクロならではの独特な雰囲気を演出することも可能であり、それはモノクロイラストが持つ魅力の一つでもあります。
「モノクロイラストテクニック」は、モノクロでキャラクターを作画する際のテクニックを紹介する指南書です。イラストレーター・jacoさんによる詳細なテクニック解説をはじめ、カラーイラストにはない表現手法、イラストのクオリティチェックを行うために見るべきポイントなども紹介するほか、jacoさんが得意とする「角娘」(角の生えた少女)のモノクロイラスト集としても楽しめる一冊にまとまっています。
本記事では、第3章「白と黒の配分、バランスを考えて描こう」より、白と黒のバランスを保つコツについてご紹介します。
あえて黒で塗りつぶした箇所を作ってみる
タッチを重ねて黒ベタに近いテイストを生み出す描き方や、黒ベタにホワイトで光の反射を描き込む技法を紹介してきましたが、ここではあまり手を加えない黒ベタの箇所をイラストの中に配置し、その効果を見てみましょう。
要所のみ墨ベタを施したイラストの場合
本来なら髪、スカート、靴下といった黒ベタ部分に、ホワイトでハイライトやタッチを入れていますが、ここでは極力手を加えていません。結果として、黒ベタが配置された箇所のバランスが良いため、違和感なく仕上がりました。さらにフラットな黒の強さから、インパクトのある魅力が生まれました。
- 髪の毛に入れたタッチはほんのわずかです。
- 上着のシワなどの描き込みは通常通りです。
- 靴下は黒ベタのまま。
他の配色も比べてみよう。
ほぼ黒ベタのイラストの場合
さらに黒ベタ部分を増やしてみました。ほぼ全面を黒ベタをにしても絵が破綻していないのは、残された白地がアクセントとなり全体のバランスが保たれているからです。さらに効果として、イラストの表情が強調されるため、絵の表現力が高まりました。
- 胸元のリボンの白がアクセントになっています。
- 黒ベタの効果を生かすため、ホワイトの線は最小限に。
他の配色も比べてみよう。
<玄光社の本>