ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第52回のテーマは「自転車」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 自転車ごとの表情をイメージに活かす。
2. 広角レンズでパースを強めたり、アンダーで撮ってメタリック感を強調しても面白い。
マンションの廊下にポツンと置かれた自転車が、メランコリックな雰囲気だったのでシャッターを切りました。ちょっと変わった形だったので、露出を極端にアンダーにして、その形が際立つように捉えています。
自転車には表情がある
自転車って表情があると思いませんか?私にはあるように見えています。元気よく走る自転車、ウキウキと持ち主の帰りを待つ自転車、長い間乗られていなくて寂しそうな自転車…。自転車の数だけ表情があります。その時々の表情の違いがわかりやすく出るように、「やりすぎかな?」と感じるくらい極端に表現してみましょう。逆に、わかりやすい空気感の自転車を被写体に選ぶのもヨシ。明るい時はめっちゃ明るく、暗い時はめっちゃ暗く撮ってみましょう。
機械・金属のイメージを増幅
自転車は、身近な存在でありながら、「メカメカしいところ」が魅力のひとつです。広角レンズでグッと寄って撮影すると、パースがつくことによって、そのメカメカしさにより迫力が出ます。また、メタリックなボディも被写体として面白いです。メタリックに塗装された部分を光らせるために、露出を極端にアンダーに振ってみましょう。シチュエーションで言うと、雨の日や、夜の街灯に照らされた自転車も、ボディが光ってきれいなのでおすすめです。
街中に停めてある、ビビッドなオレンジ色の自転車が、元気そうでいいなと思いました。オレンジ色が際立つように、背景に、補色である緑色がくるようなポジションに移動して撮影しました。
川辺を疾走する自転車があまりに爽やかだなと 感じた一枚です。自転車が「シャーッ!!!」と音を立てて横切っていく印象を出したかったので、道が真っ直ぐになるような構図にしました。
雨の日の午後、橋の袂に停めてある自転車が、鉄骨でできた橋と一体化しているように見えました。あえて広角レンズを使い、パースをつけて、ストーリー感のある一枚に仕上げてみました。