撮影した写真を他者に見せる目的は様々です。ただ記録として見せるならば「撮って出し」でも十分ですが、そこに撮影者が持った感情や、直接関係ないなんらかの意味合いを乗せたいと考えたとき、それはたとえ最終的に何も手を加えなかったとしても、表現を試みたことにほかなりません。
画面の色合いは写真や映像の印象を一変させます。例えば映画の画面をよく見てみると、シーンによっては現実の風景とはかけ離れた色合いで表現されていることに気づくでしょう。こうした映画的なカラー表現は、しばしば写真の調整でも用いられます。
「シネマティック・フォトの撮り方」では、写真に映画的な演出を加えることを大前提に、撮影時に留意すべきポイントや編集方法、鑑賞する際の心構えも解説。著者の上田晃司さんは写真と映像の両方で作品の撮影を続けており、静止画の画作り解説を主たるテーマに据えた本書の製作においても、映像製作の考え方を採用しています。
本記事ではChapter1「シネマティック・フォトの基本」より、ロケ地の天候や地明かりの使い方について紹介します。
天候と光をうまく使ってドラマチックなシーンに
雨か逆光があればシネマティックなシーンを狙える
前ページでも触れたが、シネマティック・フォトのプラスαの要素として「天気」と「光」はとても重要だ。撮影は難しくなるが、とりわけドラマチックになるのが雨だ。雨は街中の光を反射してリフレクションを生む。街中であれば人々は傘をさしたり、雨に濡れまいと走ったり、雨宿りしたりと、たくさんのドラマチックな瞬間に出会える。撮影の際は天気予報を確認して雨になる時間帯をしっかりと狙おう。雨だからといって撮影を諦めないことだ。
光に関しては、シネマティック・フォトでは一般的に難しい光とされる逆光を狙うことが多い。逆光は順光に比べると色は出にくくなるが、ドラマチックな雰囲気になる。煙や雨がより強調される露出を探ってベストな明るさに設定することが大切だ。また、曇りの日のダイナミックな雲も良い雰囲気になるので、ぜひ狙ってみよう。
リフレクション
水面やガラスに景色が反射すること。綺麗に映り込むと鏡面のように2つの世界が現れる。
玄光社オンラインストアにおいて、著者の上田晃司さんが作成したCUBE形式のLUTファイルを販売中です。本連載を参考にシネマティック・フォトを試してみたいとお考えでしたら、ぜひ購入をご検討下さい。