はじめてのクリップオンストロボ
第3回

特別な道具は必要なし。すぐに試せる「バウンス撮影」

カメラを買い、日常的に写真を撮るようになると、思っていた以上に「光」の重要性に気づくのではないでしょうか。自然光を使い、自分なりに工夫して撮るのも楽しいものですが、ストロボを使って光をコントロールできれば、屋内、屋外問わず、様々なシーンでクオリティの高い写真が撮影できるようになります。

はじめてのクリップオンストロボ」では、外付けのストロボ、いわゆるクリップオンストロボの使い方をやさしく解説。ストロボの使いどころやその効果を豊富な作例でわかりやすく紹介しており、実践するシーンをイメージしやすい点が特徴です。そのほか、露出の基本からシンクロ撮影、オフカメラ撮影などの応用テクニックまでカバー。近いシーンを自分で用意し、実践を繰り返すことで、確実に上達できる一冊にまとまっています。

本記事では、Chapter1「クリップオンストロボをオートで使ってみよう」より「バウンス撮影」に関するテクニックと作例を紹介します。

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はじめてのクリップオンストロボ

ストロボの基本テクニック・室内撮影ならバウンスが基本

角度で変わるバウンスの効果
「バウンス撮影」とは、ストロボの発光部を傾けて、天井や壁などにストロボの光を当てて、反射光(間接光)を被写体に当てる手法です。ストロボの強い直射光が、バウンスすることで拡散され、柔らかい光になります。光が柔らかくなると、ほどよい陰影がついた自然な印象の写真になります。バウンス撮影のポイントは、入射角と反射角。光が当たる角度と同じ角度で反射し、ストロボの角度で当たる光の量が変わります。

反射角度を考えないと、光が被写体に当たらないこともあるので注意が必要です。

被写体との距離によって、ストロボの角度を調節しましょう。

直当て

直接被写体に向けて発光。アゴや座っている椅子に濃い影がクッキリ出ています。全体的にパキッとした強めの印象となりました。

天井バウンス

天井に当たった光は、拡散されて「柔らかい光」になります。ストロボを真上に発光すると、反射光は真下に向かいます。

斜め45度の天井バウンス

ストロボを斜め45度上に向かって発光すると、真上にバウンスするよりも被写体に当たる光量が多くなります。

 

ディフューザーで光をより拡散させる

ストロボにディフューザーを付けると、発光時にストロボ光が柔らかく拡散されます。天井バウンスで使うと、より広範囲で柔らかなバウンス光を作れます。ディフューザーの側面からも光が照射されるので、天井バウンスでできた鼻の下や首にできた影を弱める効果もあります。光が柔らかくなった分、光量は落ちますが、露出補正やISO感度を上げて明るくすればOKです。

斜め45度の天井バウンス

斜め45度の天井バウンス+ディフューザー

壁バウンスで立体感のある柔らかい光を作る

右側の3mほど離れた白い壁にバウンスさせて撮影。立体感が出て、窓際で撮影をしているような仕上がりになります。壁が近いと光が硬くなるので、壁から適度に離れた場所にモデルを配置します。

余白多めの構図を作り、モデルを小さく配置すると可愛らしい印象になります。横位置で撮ると余計なものが入ってしまうので、縦位置で撮影しました。 50mm マニュアル露出(F2.8 1/160 秒) ISO1000 オンカメラ・ストロボ+天井バウンス TTLオート 調光補正なし

発光角度を常に意識する

縦位置で撮影をしたい時には、ストロボの首振り角度の変更を忘れないようにしましょう。例えば、横位置で天井バウンスをしていて、ストロボの発光角度を変えず縦位置撮影をすると、違う方向にストロボを発光することになるので、天井バウンスの効果がなくなってしまいます。

バウンスに適した撮影環境を考えよう

バウンスをする時に、反射させる部分に色がついている場合は要注意! その色が写真に影響してしまう「色かぶり」という状態になります。茶色い天井でバウンスをすると写真全体が茶色くなってしまいます。赤い壁であれば、被写体が赤くなってしまいます。色かぶりなくバウンスをしたい場合は、白い面に向かってストロボを発光しましょう。

茶色い天井でバウンス
和室の茶色い天井でバウンス。白い壁も被写体も天井の茶色い色かぶりをしてしまい、赤みがかってしまいました。

色のある壁でバウンス
水色の壁に被写体の顔を向けて壁 バウンスで 撮影。水色が被写体に色かぶりをして、 血色が悪い感じになってしまいました。

照明の色はどう影響する?

光の色を数値で表したものを色温度(単位はケルビン:K)と言います。ストロボ光の色温度は日中の屋外と同じく5500Kくらい。室内灯の電球色は2800Kくらいです。室内灯2800Kの場所でストロボ撮影した場合、ストロボの光と室内灯の光が混ざってしまう(ミックス光)ため、本来出したい色が出にくくなります。ストロボ撮影をする時は環境光の色が大切です。ストロボの色と似た照明の色であれば、ミックス光でも色温度の差が少ないのですが、色温度の差が大きいと、写真全体の色が均一にならないので違和感が出ます。

自然光+ストロボ
自然光とストロボの色は近いため、色かぶりによる違和感が少ないです。最初に練習するなら自然光がオススメです。

電球+ストロボ
電球の色は赤みが強いため、赤かぶりしやすいです。自然な肌色を再現したい時はオススメしません。

蛍光灯下での撮影はシャッター速度が速いと「フリッカー」と呼ばれる色のムラが出ることがあります。シャッター速度を1/100秒以下にすると軽減されます。フリッカーレスに設定できるカメラもあります。

蛍光灯+ストロボ・シャッター速度1/320秒

蛍光灯+ストロボ・シャッター速度1/100秒

ストロボのバウンス効果が出にくい場所もある

元から部屋の光が明るく、全体に光が回っている場合は、ストロボのバウンス効果は少なくなります。 また、天井が高い場所でもストロボの光が届きにくいので、バウンス効果は少なくなります。さらに、天井に梁があるなど平面ではない場合、バウンスしても思った方向に反射しづらく、狙った被写体に光が届きにくくなります。

ストロボなし

ストロボあり

背景が近く、顔に室内灯の光が均一にある状態でストロボを天井バウンスで発光をしました。ストロボを発光してもしなくても、陰影の変化があまり出ませんでした。


はじめてのクリップオンストロボ

著者プロフィール

今井しのぶ



三重県出身、神奈川県川崎市・横浜市を中心にご家族やキッズ撮影を主に活動中。専業主
婦からフォトグラファーになった経験を活かして、難しい言葉を使わず、子ども写真を可愛く素
敵に残すコツなどを伝えている。子育てママ向けのフォトレッスンは、延べ3000 名が受講。さ
らにフォトグラファー養成スクールを開講し、子育てもフォトグラファーも楽しみたいというママ
の活動もサポートしている。2020 年1月現在150 名が卒業。2018 年10月 神奈川県川崎市
にスタジオをOPEN。2019 年6月 株式会社こどもとかめら設立。フォトマスター検定EX 取得、
CanonCPS 会員、EIZOColorEdgeアンバサダー、ケンコートキナーセミナー認定講師
書籍「はじめてのママカメラ 365日の撮り方辞典」

ウェブサイト:こどもとかめら

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