飛行機写真の教科書
第2回

「飛行機写真の基本」造形の美しさを「表現」する飛行機写真のいろは

旅客輸送、物流、防災、救難、軍事など、様々な領域で活躍する航空機。「もしも空を飛べたら、何がしたいか」という人々の願いを具現化し、用途に特化した機体の機能美は、写真の被写体としてもきわめて魅力的です。

飛行機写真の教科書」では、「飛行機写真」の定義から航空機の種類や運用に関する基礎知識、飛行機撮影に適した機材、撮影場所の選定をはじめ、季節や状況ごとの表現テクニックまで幅広くカバー。

一定の専門的な知識と高い撮影技術を必要とし、難易度が高めの撮影ジャンルではありますが、マスターすれば写真表現に大きく幅を持たせられることは間違いないでしょう。

本記事では、Chapter1「飛行機写真の基本」より、飛行機写真の「表現」に関する解説を抜粋して掲載します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

飛行機写真の教科書

飛行機のかっこよさを素直に表現する

機体の特徴が分かるようなスポッティング写真を撮るのは飛行機写真の基本とはいえ、飛行機の魅力はそれだけでは伝わらない。スポッティング写真は、資料的価値は高いものの、必ずしもかっこよいアングルとは限らなく、「撮っただけ」という印象は否めない。

そこで飛行機が持つダイナミックなアクションや光線状態、背景処理などを工夫することで個性的な作品に仕上げることができる。機種ごとにかっこよく見える角度を追求したり、写真の中に美しい自然風景を取入れることで、より魅力的な写真作品になるし、撮り手の個性を表現しやすくもなる。

近年では飛行機そのものより、飛行機を点景とした情景写真を撮る人が多くなってきているようだ。もちろん、記録としての飛行機写真と表現としての飛行機写真は対極にあるわけではなく、撮影条件に応じてどちらかを優先させればいい。多くの撮影者は記録写真を撮りつつも、チャンスがあれば表現としての飛行機写真も撮り分けるというのが基本スタイルだろう。

F-4EJ改ファントムII/航空自衛隊 百里基地:11月 戦闘機の魅力は、エンジンパワーと機動性の高さにモノをいわせる派手なアクションだ。 Nikon D850 AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR(1.2xクロップ:600mm相当) F4.8 1/2000秒 ISO200 WB晴天

アングルと構図を意識する

上下の空間が空いている
離陸上昇中のF-15DJイーグル。真横に近いアングルで記録写真としては申し分ないが、機体の上下の空間が空きすぎているため、写真的には物足りない印象を受ける。

無駄な空間が空いていない
左写真の数秒後、大きなバンク角で急旋回しながら、訓練空域を目指すF-15DJ。機体上面、いわゆる背中が見えるショットは、戦闘機がかっこよく見えるアングルでもあり、かつ無駄な空間を埋められるので、写真的にも見栄えがする。戦闘機を撮るなら、積極的に狙いたい場面だ。

迫力のある構図
記録写真では機体全景が写る撮り方が好まれるが、飛行機を引き寄せて、機体の一部分を切り取ると、迫力のあるショットになる。

かっこよく見えるアングル
飛行機がかっこよく見えるアングルは機種により異なるが、どんな機体でも見栄えのするのは、正面気味の斜め前からの角度だ。

風景の中を飛ぶ飛行機

近年の飛行機写真の主流は、飛行機そのものをアップで撮る撮り方と、飛行機と美しい風景を絡めた撮り方の、2つの流れがあるといえるだろう。旅客機・戦闘機のどちらもスポッティング写真の要素はあるとして、戦闘機はアップ気味のアクションショット、旅客機は自然風景を取り入れた情景写真が好まれる傾向にある。

特に旅客機は戦闘機のようなアクションショットを狙う機会は少ないため、飛行機をアップで撮るだけではなく、夕陽や雲、街や海などを写真に取り入れる作風が人気だ。アップ撮影では機体が画面全体に満たされるよう、かつはみ出ないように撮影するという基準があるため、撮影者による差は出づらいが、情景写真では画面構成や構図といった画作りのセンスが試される。

よりよい一枚を目指すため、雲や季節の移ろいなど、常に周囲の状況に目を配り、作画に生かせるものを発見する観察眼が求められる。その分オリジナリティを出しやすいともいえるだろう。

ボーイング777-300/全日空 那覇空港:6月 那覇空港にアプローチするB777。小舟を手前に取り入れて、沖縄特有のゆるさを表現した。 Nikon D800E AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(27mm) F8 1/1000秒 ISO400 WB晴天 PLフィルター使用

背景や切り取り方を意識する

都会をバックに
地方空港で雄大な自然と絡めるのもいいが、街の風景を取り入れるのもまたいいものだ。作例のように、背景にビル群を取り入れると、都会的な雰囲気になる。

魚眼レンズで切り取る
飛行機の魅力をそのまま切り取るのが主流だが、時にはレンズの効果を狙って作画するのも面白い。作例は円周魚眼レンズを使っての撮影。

季節感を取り入れる

飛行機と風景を絡めた情景写真の場合、バックグラウンドとなる風景が美しければ美しいほど、作品の魅力が増す。日本には春夏秋冬の四季があり、季節ごとのモチーフに事欠かないので情景写真を撮りやすい国だといえよう。春であればサクラやナノハナといった春の花、夏であれば夏雲や青い海、秋であれば紅葉/黄葉や朝霧、冬であれば雪景色など、四季折々の風物詩を写真に取り入れると季節感を表現しやすい。

季節感を取り入れた写真を撮れるかどうかは空港周辺の環境に依ることがほとんどだが、それぞれのベースとなる飛行場で自分だけの季節感を発見するのもいいだろう。自然風景を取り入れた撮影の場合、最も重要なのは旬を逃さないことである。たとえばサクラでは1週間に満たない花期に良視程の晴天というのは1~2回程度しかなく、このタイミングで現場に立てる心づもりが結果を左右する。自分の都合ではなく、自然に合わせて撮影日を決めるのが成功の秘訣だ。

ボーイング767-300/デルタ航空 成田空港:4月 満開のサクラとB767。四季折々の美しい自然風景を取り入れることで、作品の魅力が上がる。 Nikon D4S AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(70mm) F9.5 1/750秒 ISO400 WB晴天 PLフィルター使用

四季折々の風景の中でとらえる


サクラやナノハナといった花や、明るい陽光を取り入れると、春の雰囲気を表現しやすい。春の花は旬が短いので、花期と天気のタイミングが重要。


青い海や白い入道雲、よく茂った森などは夏らしさを感じさせる。また、強烈な太陽そのものや濃い影なども夏の表現としては有効だ。


空港周辺には紅葉する樹種は少ないが、黄葉する樹種は狙えるので、黄色く色づく林を背景に入れるとよい。または、朝霧を狙うのも秋らしさを表現できる。


冬は積雪した地面や雪山を背景に取り入れると、簡単に冬を表現できる。また、積雪した大地が大きなレフ板となり、機体下面を照らす「雪レフ」も狙える。


飛行機写真の教科書

関連記事