イラストレーター・ももこさんインタビュー〜 光に包まれた繊細な美少女のイラストを描く〜

イラストレーター・ももこさんの画集「ももこ画集 arpeggio」が2024年11月18日に刊行となります。この画集の発売を記念し、2024年11月8日から11月27日まで、東京都渋谷区のギャラリー、pixiv WAEN GALLERY by TWIN PLANET × pixivにて個展が開催されており、本書の先行販売も行っています。

柔らかで美しい色使い、スケール感のある背景のなかにある憂いを帯びた表情の少女たちは、どんなふうに描かれているのか、そして、前作の画集から4年が経ち、ももこさんがどんなふうに進化したのか、お話を伺いました。

小さなころから自身でキャラクターを生み出すことが好きだった

-まずは自己紹介からお願いします。

イラストレーターとして女の子のイラストを描いています。
主な作品にノベル「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」やVtuberデザイン『博衣こより』『ペトラ・グリン』『五十嵐梨花』、個人に画集『arietta』があり、今回新作を出させていただくことになりました。

-ももこさんは、いつ頃から絵を書き始めたのですか?

小さいときから絵を描くことは好きでした。4歳くらいのときからかな。当時はセーラームーンのイラストを自分で描いてアレンジして◯◯ムーンと名前もつけたりしていました。いま思えば当時からキャラクターデザインをしていた感じです。
ハートやリボンが好きだったので、そういったモチーフを使って描いて、名前も考えて創作するっていう、どちらかというと描くだけではなくて、自分で生み出すのが好きでした。

イラストを長く続けるためには基礎が大切

タイトル「#ももこがVtuberになったら…」

-ももこさんは社会人を経験されて、イラストレーターとして独立していますが、社会人経験はどのような経験でしたか?

私は社会人を3年経験しました。当たり前のことですが、納期を守るとか、規則があるとか、社会性が学べたのでとても大事な時間だったと思います。

イラストレーターを目指す人は、大学や専門学校で学んだほうがよいでしょうか?

学校で学ばなくても、イラストが好きだったらイラストレーターにはなれると思います。独学でプロになった方もいらっしゃいますし。

私自身は、大学では自由に描いていました。専攻は油絵でしたが、アクリルガッシュなどでも描いていましたし、ほんとうに自由に絵を描いていたんです。その後、ペンタブで描くようになって、キャンバスに美少女イラストを描いたりするようになりました。

油絵では人物画が中心で、花も描いていました。アニメ調に描いてみたり、レントゲン風に描いたり、いろいろなスタイルで描きました。

美大に行く人向けの予備校で毎日たくさんのデッサンを描いていたのですが、基礎を学ぶことはとてもよかったと思います。立体を描いて先生に見てもらうということを日々繰り返していました。私にとって、あの時が一番、絵を学べた時間だったと思います。

-人体を描くためにどのようなことを学びましたか?

予備校、大学ともに、よくテレビドラマなどで見かけるシーンのように、モデルの女性を囲んでデッサンをしたり、1ポーズが10分間で変わっていく人を描いていくなど、実際の裸体を描くので、それで人体を学びました。
基礎はやらなくてもできる人もいるかもしれませんが、描き続けているとその大切さがよくわかります。イラストレーターの方でも、SNSに自身の手をデッサンしたものをポストしていたりして、そういうものを見ると、こんなに描けるんだ!と驚かされることもあります。

結局、長く続けるには基礎が大事になってくるのだと思います。独学でも本を買って、人体構造の本など技法書を読み、ひたすら模写するということを繰り返していくことで、身についていくと思います。

色鉛筆を使って描かれたももこさんの原画。淡い色使いのなかに、たくさんの階調があり、デジタルで描かれた作品とは別のやさしい表現となっている。

-影響を受けた作品やイラストレーターや作家はいますか?

マンガは読むよりも、創作でキャラクターを作ったりすることの方が好きでした。

イラストレーターではカントクさんが好きで、画集も買いました。イラストってこうやって描くんだ、この人のように描けるようになりたいと思いました。

大学で学んだ油絵などとは違い、イラストは省略して描いていくものなので、顔なども二次元で、髪の毛の影なども省略して描きます。その中でも、アニメ調にしつつリアル感を出し、いかにきれいに描くかをカントクさんから学びました。

-イラストを描くとき、習慣にしていることはありますか?

ポーズが不自然じゃないかを確認するためにセルフタイマーを使って自分をカメラで撮ったり、鏡の前で同じポーズをして確認して、違和感がないようにしています。部屋に姿見を置いていて、全部自分で確認します。

立体で描くデッサンなどと違って、イラストになると違和感が出てきてしまう部分があって、実際に描くとき、頭の中は立体で考えているので、ここは前からだと見えないなとか、この向きだとここに目はこないなとか、いろんな角度で描けるように練習、勉強をしています。

印象的な光と影からイラストの着想を得る

画集「ももこ画集 arpeggio」掲載作品(オリジナルキャラクター)

 

-オリジナルを描くときに、どんな順番で全体の世界観を作るのですか? また、作品制作の際に、アイデアのきっかけとなることはどんなことですか?

ラインティング(=光)ですね。光がここに入っていて、こういう雰囲気がいいなっていうところから入ります。キャラクターがどういうところにいるのかということをまず考えます。後ろから光が当たってるとか、ピンでスポットが当たっているシーンとか。

日常の中で見た印象的な光や旅先での風景から描きたいシーンが浮かぶこともありますし、Pinterestなどの画像サイトを見て描きたいシーンが決まることもあります。リアルなものに出会って、イメージがわくことが多いかな。資料として写真を撮っておくことも多いです。

-描くときにいちばんこだわっているポイントや、色使いへのこだわり、気をつけていることはありますか?

私自身は淡い色が好きです。モネを感じるような。印象派がとても好きなので、いろんな色を使います。

色使いのこだわりは……きれいに見えるように、なるべく灰色や黒を使わずにできるだけつまらない色にしないということでしょうか。イラストでは乗算がよく使われますが、味気ない色になる気がして、色をそのまま使います。これは油絵をやっていたからかもしれません。重ねて描いてみたり自分の色で塗っていきます。

また、濃度は100%を避けています。線画で顔の周りを描くときには、線がはっきりした色だと浮いてしまうので、薄い色を使い、塗っている色と線は近い色、なじむ色にしています。

イラストごとの全体の色のトーンは直感で決めることが多いです。

ももこさんの色使いは、淡い中にさまざまな色が幾重にも塗り重ねられており、立体感や奥行き感のある、リアルさも魅力のひとつ。

-目の色は色を決めるのはどうやって決めているのですか?

髪の色に合う色や、他のキャラクターにかぶらないようにするなど、都度決めています。

-ニコニコの笑顔ではなく、憂いのある表情が印象的なキャラクターが多いと思うのですが、表情はどう決めているのですか?

私自身が、そういう表情が好きなんだと思います。ニコニコすぎてもつまらないかなと。でも、悲しい表情をしていると、◯◯ちゃんは何があったの? 大丈夫? と心配されることも多いんですよ(笑)。

画集「ももこ画集 arpeggio」掲載作品(オリジナルキャラクター)前ボケ、後ろボケによって、キャラクターを浮き立たせている。

-背景のボケはどのように作っているのですか?

背景用の絵をはっきり描いたあと、そのレイヤーをボカしています。背景は基本的に一枚ですが、ボケにグラデーションをかけることができるので、バランスを見ながらボケの量を決めます。

-小物やアクセサリーなど細かなものを描くときに参考にするものはありますか?

最近は雑誌ではなくInstagramなどを参考にしています。そのまま描くというわけではなく、いいなと思ったもののイメージだけ頭に置いておくような感じです。ネイルや、アクセサリーなど、スクリーンショットを撮ってイメージをためています。

画集「ももこ画集 arpeggio」掲載作品:オリジナルキャラクター縁ちゃん

-背景に水がある絵の透明感が印象的でした。この透明の液体的なものを描く際のこだわりを教えてください。

「光と影がちゃんとある」ということが大事で、水は、実際にはそこに動きがなくても少し動きをつけるなど、光と影を感じてもらえるように描きます。光と影、水の表現は、写真などを見るとヒントがありますね。描くために、いろいろな写真を見ます。そういったインプットはイラスト以外のところからすることが多いです。

-趣味として好きなことはありますか?

ゲームが好き(ファイナルファンタジー)なんですが、最近ではあまり時間がなくて。ファイナルファンタジーは、14を知ってから興味を持って、他の作品を始めました。あとはお菓子作りもします。クッキーとか作りやすいものですが、イラストから離れて、別のことに没頭する時間としての趣味が多いです。

-好きな映画はありますか?

ハリーポッターシリーズやワイルドスピードシリーズが好きで何度も観ています。車にも興味があって。観ていてスカっとするのが好きです。

-絵を描くことがイヤになることは?

ありますよ(笑)。同じキャラクターをずっと描いているときには飽きてしまうこともあります。そういうときは息抜きで自分の好きな絵を描いたり、自分の日常の日記みたいなものを4コマ漫画的に描いて発散します。

-機材などの作業環境を教えてください。

SAIを使用しています。クリスタ(CLIP STUDIO)の方が機能はたくさんあるのですが、イラストを描き始めたころからずっと使っているので。
PCはWindowsで、ワコムの板タブ(ペンタブレット)Wacom Intuos Pro Mサイズを使っています。イラストはずっと板タブを使っています。液晶のタブレットだとどうしても手が邪魔になってしまって、汗ばむと線がうまく引けなかったりしてしまうんです。

2020年5月刊行の「arietta」(右)と新作「arpeggio」。4年の間により精細で美しいイラストへと変貌を遂げている。

-新作の画集「ももこ画集 arpeggio」について聞かせてください。

前回の画集から4年が経過して、絵柄の違いはもちろん、もっと繊細に描けるようになったと思います。自分のなかでもこの4年間で成長できたと感じています。

以前は、背景の細かい部分はあまり描いていなかったこともあったのですが、背景がだいぶ細かく描けるようになりました。

昔は昔でタッチが違っていて、油絵がまだ残っているなと感じます。いまは線をはっきり描いたり、よりイラスト的になりました。イラストを描くために、いろいろなインプットをしているうちに自然と目が肥えてきて、次はこうしよう、前よりよくしようと描き続けているうちに変わってきた気がします。そこを見てもらえたら嬉しいですね。

 

ももこ個展「arpeggio」
開催期間:2024年11月8日(金)〜11月27日(水)12:00〜19:00
会場:pixiv WAEN GALLERY by TWIN PLANET × pixiv
東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F
(東京メトロ「表参道駅」A1出口徒歩5分)
入場料:無料
展示情報ページ: https://pixiv-waengallery.com/exhibition/momoco_arpeggio/

ももこさんの個展では、新作の画集の先行販売、アクリルスタンドや缶バッジオリジナルグッズも販売されている。

 

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