風景写真の便利帳
第2回

望遠レンズは切り取りやボケ、圧縮効果を活用せよ

デジタルカメラやスマートフォンの性能が上がり、シャッターを押せば誰でもカンタンに美しい写真が撮れるようになった。しかし、「ワンランク上の写真を撮りたい、もっとレベルアップしたい」という人も多いだろう。萩原ブラザーズこと、風景写真家の萩原史郎氏と萩原俊哉氏は、共著の「風景写真の便利帳」で自然風景撮影にかかわるさまざまなノウハウを紹介している。

第2回目は、「撮影編」から望遠レンズの使いこなし方をご紹介する。

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CHECK  POINT!!

  • 風景の切り取りは望遠レンズが欠かせない
  • ボケを活かして柔らかく表現
  • 対比効果の高い圧縮効果を活かせ

 

眼前に広がる風景から自分の心に響いた部分を探しだし、要素を絞り込んで構図を作ることが多いことから、風景写真は引き算と言われることが多い。そのためには望遠レンズがベストチョイスだ。だが、切り取るだけでは十分に使いこなしているとは言えない。望遠レンズならではの特徴を知ることで、より多彩な写真表現ができるようになる。

まずはボケ効果だ。ふつう焦点距離が長くなればなるほどピント位置の前後がボケやすい。被写体に近付き、開放F値を選べばさらにボケる。このことを利用すれば、ぼかした背景から主役を浮き立たせて目立たせたり、前ボケを利用してふわっと柔らかな印象に表現することもできる。

一方、圧縮効果とは、異なる距離の被写体を画面上で重ねることで、見かけ上の距離差を縮めて被写体同士が近付いて見える効果だ。たとえば、桜と残雪といった異なる季節を対比させることで、季節の移り変わりを表現できる。

なお、望遠レンズはぶれやすい。三脚や手ブレ補正機能、ISO感度を上げてカメラブレを防ごう。

[ 撮影データ]フルサイズカメラ 70 -200 mmズームレンズ( 200 mm ) 絞り優先AE( F4・1/500秒) + 0 .7 EV補正 ISO100 WB:太陽光

明るく柔らかなボケは春の風景によく似合う。そう考えながらナノハナを前ボケに選んで撮影したカットだ。たっぷりとナノハナを画面に入れて大口径望遠ズームレンズを選択。明るめの露出で春らしさを強調している。

季節を対比させる、樹の隙間からチラリと紅葉を見せる、背景を大きくぼかすなど、風景撮影における望遠レンズの役割は大きい。ボケを活かしやすいことから、優しさや柔らかさとった心情を表現しやすいレンズでもある。

[撮影データ]フルサイズカメラ 70-200 mmズームレンズ( 100 mm ) 絞り優先AE(F8・1/80秒) -0.7EV補正 ISO200 WB:太陽光

陰影が印象的な紅葉の山並みに惹かれて撮影したカット。余計な要素を排除してシンプルに構成している。望遠レンズの切り取り効果に加え、圧縮効果によって近景、中景、そして遠景の山の斜面を対比させている。

 


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風景写真の便利帳

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かし方
自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

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