ポートレートは専門の写真家がいるほど確立されたジャンルです。カメラを持った人なら一度は撮ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。
ただ、ポートレート撮影には「モデル」の存在が必須。モデルさんのスケジュールや撮影場所を決めるなど、撮影を始めるまでに多くの段取りが存在します。
そこをヒラリと乗り越えたのが、女性セルフポートレート写真家のRinatyさん。初の著書「#セルフポートレートの裏側 撮影もモデルも全部わたし。」は、自身をモデルとして撮影するセルフポートレートの撮り方、そして撮影の裏側を公開した一冊です。セルフポートレートは、自分がモデルで自分がフォトグラファー。誰もがチャレンジできるジャンルです。
コンセプトは「わたしだけの世界観で、そこに写ったわたしなら好きになれる」。
自分の新たな一面を発見でき、自分のことをもっと好きになれるセルフポートレート作品50点の中から、8点の作品を紹介。第8回は二度と見られなくなる景観を切り取るセルフポートレートです。
失われゆく景観と共演する
ふぐの看板を残したいと思った一枚
大阪府の新世界にあるふぐ料理店「づぼらや」が閉店し、象徴であるふぐの看板が撤去されるというニュースを見ました。これを作品として残したいと思い、ふぐの看板があるうちに撮影することにしました。
Point 1 人の少ない時間に撮影
昼間や夜は多くの人でごった返すため、終電で現地に行き、夜明けまで撮影し続けました。撮影した時間帯は空と地面の輝度差が大きかったため、GNDフィルターを使用して空の部分を減光させました。
Point 2 人物を浮き上がらせるライティング
暗い時間帯だったため、ストロボ2灯を使って顔と背中を照らし、人物を浮き上がらせました。ふぐの看板、周辺の街並み、通天閣が全て入るように超広角レンズを選びました。
Point 3 和洋折衷の衣装
海外の観光客に人気のスポットであるため、日本らしさを表すために着物をドレスの上に羽織り、和洋折衷を意識しました。そして動きを入れるために着物を大きく振りながら撮影しました。
【撮影の裏側エピソード】二度と見ることができない景色
私が撮影した10日後に看板が撤去されたというニュースが。今はもう二度と見ることができない景色となりました。普通、作品を撮る時はモデルとカメラマンでスケジュールを合わせて撮りに行く必要があります。しかし、セルフポートレートであれば、自分と撮影場所の都合さえあえば撮りに行くことが可能。この一枚はセルフポートレートだからこそ撮影できた作品だと感じています。