粘土で作る!いきもの造形
第1回

粘土造形スーパーテクニック〜重厚感のある皮膚のアフリカゾウを粘土で作る〜

今にも動き出しそう!本物と見間違うほどリアルなフィギュアたち。竹内しんぜんさんは、著書「粘土で作る! いきもの造形」(ホビージャパン刊)のなかで、自然が作り出した様々な生き物の活き活きとした姿をフィギュアとして再現するための方法を解説しています。本書は今までの技法書と異なり、モチーフとなる動物を観察するため、製作者自身が動物園に足を運び、そこで働く飼育員の皆さんにも取材を行い、図鑑や写真だけでは知ることのできない生の情報を元に製作しています。

本連載では、アフリカゾウを粘土でつくるテクニックとその手順を細かく公開します。

この連載の他の記事はこちら

粘土で作る! いきもの造形

超リアル造形 粘土で作るアフリカゾウ

全長:約35cm(親)、約16.5cm(仔) 原型素材:石粉粘土(ファンド) 2018年製作

製作準備 〜アジアゾウ?アフリカゾウ?〜

子供の頃からおなじみのゾウさん。「作りたいな」と思った時点では、だいたいどんな姿かはわかるものの具体的なイメージができません。簡単なスケッチすら何も見ずには描けませんでした。とはいえ、さすがのメジャー動物。写真集、ドキュメンタリー映像や、インターネットで拾える画像など、資料となる情報は沢山あります。それらを元に造形すればそれらしい物ができそうです。でも、それじゃなんとなくつまらない。「自分なりにゾウについて、知っていこう!」と思いました。

まずは簡単に下調べ。現在の地球上で生息しているゾウは「アジアゾウ」「アフリカゾウ」「マルミミゾウ」の3種が存在するようです。マルミミゾウはアフリカゾウとよく似ていて、ぱっと見の違いと言えば、「小柄かな?」という程度。以前はアフリカゾウの亜種とされていたり、現在もアフリカゾウ属に含まれるとされていて、とても近い関係のようです。ザックリと種の特徴を見るなら「アジアゾウとアフリカゾウ」といった感じで比べると理解しやすく、図鑑やインターネットで簡単に調べられます。「耳の大きさ」「頭の形」「鼻先の形状」「背中の丸み」「蹄の数」などまとまった情報が得られ、それぞれの違いがよくわかります。

熊本市動植物園(熊本県)のアフリカゾウ

実際にいくつかの動物園を廻りアジアゾウ、アフリカゾウを見てきました。下調べしていた情報のとおり、なるほどなるほど、確かに耳はアフリカゾウが大きく、頭や鼻先、背中の形も違います。他にもいろいろ調べていた情報を確かめるように観察できたのですが…、蹄の数だけは下調べの情報と違っていま
した。

「アジアゾウは前5・後4本で、アフリカゾウは前4・後3本」というように勉強していたのですが、アジア・アフリカ双方、前足5本、後足4本の蹄が見えます。前足の蹄は人間の手で例えると人差し指、中指、薬指にあたる3本が大きくて、その両サイドに小さな蹄が見えている。アフリカゾウは特に親指の蹄が小さくなっています。ベタっと接地している時は蹄なのか土なのか解らないくらいの小さなポッチリです。後ろ足は小指側に1本同じような小さい蹄がありました。自宅に帰って再度調べると「アフリカゾウは前4〜5・後3〜4」とか「マルミミゾウは前5・後4」などという記述も見つかります。あれだけ小さな蹄なら、生えてこない場合もあるのでしょうか。我々人間も、足の小指の爪があまり伸びない人が居たり、親知らずが生えない人が居るように、アフリカゾウの蹄もあったりなかったりするのでしょうか。

まぁ、そんな疑問も残りましたが、アジアゾウとアフリカゾウを観察していて、どちらかというとアフリカゾウに魅力を感じたので、今回はアフリカゾウを作ることにしました。一般的に、メスよりもオスの方が大きくてカッコいいと言われるのですが、国内の動物園に居るアフリカゾウはメスの飼育数の方が多く、今回観察できたのもメス。私が子供の頃に初めて見たのもメスのアフリカゾウですし、テレビのドキュメンタリーなどでもメスが構成する群れを追った映像が多い気がします。メスの方が馴染み深く「作るならメスが良いな〜」ということで、今回はアフリカゾウのメスを作ることにしました。

アフリカゾウ製作の前、まだ動物園での観察もあまりできていない頃に、一度練習のつもりでひねり出したゾウ。短時間でザックリと簡単な工作で留めます。失敗も強度不足もお構いなし。スケッチや落書き感覚で作っておくと、「本番ではこうしよう」といった構想が立てやすくなります。

母ゾウの製作① 芯を作る

まずは作りたい作品のサイズを決め、芯となる部分を製作します。

動物園で撮影した写真を、作りたい大きさにプリントし、その上から図鑑などを参考にゾウの骨格を想像して描いてみます。あくまで目安ですから、骨が出っ張ったところや、関節の位置が大雑把に解ればOKです。

 

すべて粘土で作ると作品が重くなるだけでなく、粘土の乾燥にも時間がかかってしまいますので、芯のなかにはギュッと丸めたアルミホイルを使います。それをプリントした写真に重ねてサイズを調整します。

 

使う粘土は石粉粘土のファンド。自然なシワがつくりやすいファンドがゾウの皮膚感にピッタリだと判断しました。袋から必要な量の粘土を取り出したら、よく練って指で膜状にのばしながらアルミホイルを包みます。

 


続いて四肢の芯となるパーツを作ります。まずは同じくらいの大きさに切り分けた4個の粘土玉を手のひらで転がして棒状に延ばします。

長さを調整して、前肢、後肢に分け、プリント写真に合わせて関節位置をつまみ自然な角度に曲げます。頭部、胴体、前肢、後肢の芯ができました。いったんこの状態で乾燥させます。

次回は、母ゾウの骨格を作ります。

粘土で作る! いきもの造形

関連記事