現代風景写真表現
第5回

写真は難しい

長く風景写真を撮っていると、「風景」と「写真」の両方について理解が深まり、結果として写真作品を見る目も培われてくるものです。自分が撮る写真と、他者が撮る写真の違い、それぞれの持ち味に気づくこともあるでしょう。しかしそれは時として多分に感覚的で、言語化しにくいものであったりもします。

現代風景写真表現」では、萩原史郎、俊哉兄弟が長年培った知識、経験、そして風景写真家としての矜持を「1作品、1エッセイ」の形で多数収録。美しい作品とシンプルな言葉を通して「風景写真によって表現するとはどういうことか」を知ることができる一冊です。

四季を写す中で持っておくべき心構えに関する言葉のみならず、テーマとした風景の考察や撮影時の意図、構図、露出、現像設定なども併せて掲載しており、風景写真のハウツーも学べます。

本記事では第二章「夏の山水は清々しき緑に包まれ」より、「写真の難しさ」に関する記述を紹介します。

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現代風景写真表現

プラス思考で呟く「難しい」

初心者やハイアマチュアに限らず、「写真って難しい」と言われるし「先生のように撮れない」と嘆かれる。もちろんレベル相応の悩みだが、それはそうである。写真が簡単だったら、先生なんて要らないし、ハウツー本も必要ない。見方を変えれば、難しいから面白いのではないだろうか。すぐに組み上がるよりも、何日もかけて出来上がったジグソーパズルのほうが達成感があるのでは?

一流の表現者も、今日写真を始めて明日一流になったわけではない。それこそ撮影や反省、思考の繰り返しを重ね、多少の遅い速いはあるにしても、やっとの思いでとあるステージに立つが、そこは決して終着駅ではなく、いつも途中駅である。

「難しい」が愚痴ではなく自分への鼓舞になり、上達のための叱咤激励だとプラス思考ができるなら、何度でも呟ける魔法の言葉だ。

マイクロフォーサーズカメラ 12-100mm ズームレンズ (24mm /35mm 判換算48mm) 絞り優先AE(F8・1/400秒) 露出補正なし ISO200 WB: 太陽光

画題の考察
待ちわびた光:光芒が撮れることで有名な場所だが、何度も失敗してきた。ようやく撮れたその喜びを素直に表した画題。ただ、いくらか個人の思いに偏り過ぎている。

現場の読み
暗いうちに現場に到着。すでに地面には霧が這い、東の空も開けている。太陽が昇り、予想通りに光芒は出現したが、時間との闘いであるという認識を持ちつつ撮影した。

構図の構築
二股の樹の間から黄金の光を導く。手前に伸びる太い2本の影と、背景に見える左右の樹のバランスをとった構図。遠い背景がわずかに見える工夫も意図的なものだ。

露出の選択
カメラ固有の超高解像機能を使った撮影なので、絞りはF8が上限。とはいえマイクロフォーサーズ規格なので、フルサイズ換算でF16程度に相当する被写界深度はある。

撮影備忘録
光芒は欲しいが、いざ出現していると一瞬も気が抜けない忙しさ。飛び回るように撮るので、特に構図にはそのたびに難しい判断が求められるが、嬉しい悲鳴でもある。

RAW現像
ポイントは白飛びさせず黄金の色を出すこと。そのためにやや「露光量」と「ハイライト」をマイナスに調整。「シャドウ」を使って画面手前も少し明るめに調子を出した。
露光量:-0.60 ハイライト:-30 シャドウ:+30


現代風景写真表現

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