四季の空 撮り方レシピブック
第7回

四季の空を撮る!撮るチャンスの短い「けあらし」は気温と風、場所選びが重要

被写体としての「空」は、誰もが見上げればいつでも目にすることができ、その時々で様々な表情を見せてくれる、身近で手軽な存在です。しかし誰が撮っても「それなり」の絵になる一方で、写真映像作品として「それなり以上」を目指すのであれば、技術を磨き、機材を整えるだけでは足りず、さらにひと工夫もふた工夫も必要になる奥深さがあるジャンルでもあります。

四季の空 撮り方レシピブック」では、日本の四季に見られる気象現象を中心として、「空」にまつわる様々な作例と、撮り方のコツを解説しています。また、機材選びやカメラ設定についても言及しており、様々な条件がありうる気象撮影における勘所を掴むのにも役立つ一冊となっています。

本記事では「四季の空を撮る・冬の空」の章より、「けあらし」の作例を抜粋して紹介します。

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四季の空 撮り方レシピブック

けあらし

けあらし寒い朝に海などから発生した水蒸気が、霧状になって広がる光景だ。朝日にあたって輝く姿が美しいが、短時間で終わってしまう。

朝日とけあらし
朝日に対して手前のけあらしを逆光で撮影。前方に岩があるため写真にメリハリが出た。押し寄せる波しぶきには注意したい。

茨城県大洗町 11月 6時35分 富士フイルム X-T2 XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR 150mm F9 1/2000 秒 ISO400 中央部重点測光  0EV WB晴れ

けあらしは気嵐とも書き、秋の終わりから冬のはじめに大陸から冷たい空気がやってくると、水面から湯気のような霧が一時的に発生する現象だ。日本各地で冬の風物詩として知られている。海や湖、川などの水がまだ温かく、冷たい空気との温度差が大きいと現れやすい。朝早く見られる現象であり、太陽の光が水面を温めると、すぐに終わってしまうことが多いので、見ることができるチャンスは意外と少ない。風が弱く冷え込んだ晴れた早朝が狙い目だ。

岩場のけあらし
岩場では、砂浜の海水から発生するけあらしの存在がわかりやすい。シャッター速度を上げて岩場にやってくる波も構図に取り入れた。

茨城県大洗町 11月 6時47分富士フイルム X-T2 XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR 167mm F9 1/1000秒 ISO500 中央部重点測光  0EV WB晴れ

けあらしが現れそうな時は、太陽が昇る前から現地へ行き、日の出のタイミングで太陽がよく見える場所から撮影する。逆光で撮影すると霧が輝くので、けあらしの雰囲気を表現しやすい。また低い角度から撮影すると、けあらしが何層にも重なるので、より幻想的な光景となる。冬の朝の寒さは厳しく、太陽はとても眩しいので、撮影するのは意外と大変だ。液晶ファインダーを使ってフレーミングしよう。段階的に露出を変えて、複数枚の写真を撮影するといい。


四季の空 撮り方レシピブック

*本記事に掲載している写真の著作権は著者が所有いたします。写真の無断使用や転載を禁止いたします。

著者プロフィール

武田康男


空の冒険写真家(R)
1960年東京生まれ、千葉県育ち。
東北大学理学部卒業後、高校教諭、第50次南極観測越冬隊員を経て、
大学や市民講座の講師、執筆、撮影、番組制作、出演などを行っている。
気象予報士。日本気象学会会員、日本自然科学写真協会会員など。
【著書】
空の探検記
楽しい気象観察図鑑
虹の図鑑
雲の名前、空のふしぎ
デジタルカメラ昼と夜撮影術」など
http://www.skies.jp/

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